【問55解説】《頻出問題》
モルトウイスキーの個性の約7割が、熟成の段階で決まると言われています。その熟成が行われる熟成庫(ウエアハウス)には、いくつかの方式があり、スコットランドやアイルランド、日本などでは主に伝統的なダンネージ(Dunnage)式か、1950〜60年代に生まれたラック式が採用されています。ダンネージ式は、土の床に直接木のレール(輪木)を敷いて樽を並べます。一般的には3段までしか積みません。
パラタイズ(Palletaise)式は、パレット板の上に樽を縦向き並べる方法でダンネージ式やラック式よりも省スペースで済みます。
下の写真は山崎蒸留所のダンネージ式熟成庫
下の写真は白州蒸留所のラック式熟成庫
下の写真はラッセイ蒸留所のパラタイズ式熟成庫
写真出典:Whisky ADVOCATE
※参考にならないかもしれませんが、筆者の覚え方は、
・ダンネージは、段にして寝かすから「段寝ージ」
・パラタイズは、英語で「Palletaise」とパレットの文字があるので、パレット板の上に樽を縦向きに並べる方式というイメージを作っています。
【テキスト:P197】【新版テキスト:P229】
【問57解説】
ワームタブとは、蛇管式と言われる冷却装置のことで、ワーム(コイル状をした銅製のチューブで先端に行くに従って細くなった構造を持つ冷却装置)管を通るアルコールの蒸気を冷却する巨大な桶のこと。木製のものと金属製のものがある。現在は、シェル&チューブ式のコンデンサーが主流で、それに比べると効率は悪いが、時間をかけて液化させることで、香り豊かなスピリッツになるという。
下の写真は、現在博物館として公開している「ダラスドゥー蒸留所(1983年閉鎖)」内に展示してあるワームタブの説明図。
写真出典:Whisky.com
下の2枚の写真はタリスカー蒸留所のもの。全部で5槽あるワームタブのうち、手前の3槽が再留釜用、奥が初留釜用の2槽。
写真出典:SAKEDORI
【テキスト:P38、P226】【新版テキスト:P30、P224】
【問61解説】
【テキスト:P45】【新版テキスト:P39】
※なお、この動物のデザインは、1877年にローランドのグレーンウイスキー業者6が集まりDCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド)が結成され、1987年にこのDCLがギネスグループに買収されUD(ユナイテッド・ディスティラーズ社)となった際に「花と動物シリーズ」としてリリースされたもので、UD社が保有する22のブランドからリリースされました。
その後、1997年にギネスグループとグランド・メトロポリタン・グループが合併しDIAGEO(ディアジオ社)が誕生しことに伴い2001年頃に、新たに4本(オスロスク、グレンエルギン、グレンスペイ、ストラスミル)がラインナップ追加され、合計26本になりました。上のクライヌリッシュを除く、25本のデザインをを全て集めたのが下の写真です。
1級用のオリジナル参考書から抜粋しました。
【問63解説】
「ロイヤルブラックラ蒸留所」は、1812年にハイランド地区に設立された、世界で最も古い蒸留所の一つといわれています。1833年にウイリアム王4世によって、ウイスキーで初めてロイヤルワラント(英王室御用達)を与えられた歴史を持ち、「王のためのウィスキー」と呼ばれました。
全蒸留所の中で、ロイヤルと冠せられているのは、「ロイヤルロッホナガー(ディアジオ社)」、「グレンユーリー・ロイヤル(1985年閉鎖、ディアジオ社)」、「ロイヤルブラックラ(バカルディ社)」の3つのみです。これもよく出題されますので、覚えておきましょう。
※「ロイヤルロッホナガー蒸留所」は、地元の資産家ジョン・ベグが1845年に創建しました。3年後の1848年にヴィクトリア女王がバルモラル城を購入したため、ベグは女王一家を招待しました。その数日後、ベグのもとに「王室御用達」を許可するワラント(勅許状)が届けられ、以来ロッホナガーは頭にロイヤルを付けて呼ばれるようになりました。生産能力はディアジオ社が所有する蒸留所の中で最小規模で、その生産量のほとんどが、ジョニーウォーカー・ブルーラベルなどの原酒に用いられます。
※「グレンユーリーロイヤル蒸留所」の創業は1825年。蒸留所の創設者、キャプテンバークレーは地元の議員であり、裁判所に友人がいた。そのためか、時の国王ウィリアム4世は彼に末尾に「ロイヤル」を付けることを許可した。バークレイの死後、子供がなかったため、蒸留所は競売にかけられて、1857年にグラスゴーのリッチー社が買収。1953年にはDCL社がオーナーとなり、その後UD社系列となっていましたが、1985年に閉鎖。1993年には18エーカーの土地を含む蒸留所の建物は、地元の不動産会社に売却されました。シングルモルトは1996年の国際ワイン&スピリッツ賞で最高賞を受賞しています。グレンユーリーとはゲール語で「ユーリー谷」といる意味ですが、実際の蒸留所は北海に面したリゾートタウン、ストーンヘイブンのすぐそば、コーウィー川のほとりに建てられています。
【新版テキスト:P49】
【問64解説】《頻出問題》
原料の大麦を喰い荒らすネズミや小鳥を退治するための猫を「ウイスキーキャット」「ディスティラリーキャット」と呼んでいます。
ギネスブックにも載った「タウザー」という雌猫は、23歳11ヶ月という長寿を全うし、1987年4月に亡くなったそうです。
写真出典:flickr
【テキスト:P65】【新版テキスト:P63】
【問65解説】
グレーンウイスキーは集約的な生産が可能なため、数ヵ所の製造工場でスコッチウイスキーに必要な量を確保することができます。そのため、現在操業中・休止中の主な蒸留所は、以下の7ヶ所です。会社名とセットで覚えておきましょう。
●キャメロンブリッジ(ディアジオ社)
●ストラスクライド(ペルノリカール社)
●ガーヴァン(ウイリアム・グラント&サンズ社)
●ノースブリティッシュ(エドリントングループ社)
●インバ―ゴードン(エンペラドール社)
●ロッホローモンド(ロッホローモンド社)
●スターロー(ラ・マルケニケーズ社)
【テキスト:P86】【新版テキスト:P100】
【問66解説】
連続式蒸留機の発明者のひとりはスコットランド人のロバート・スタイン(1826年に考案)ですが、現在も使われる蒸留機と同じ基本構造の装置を開発したのは、アイルランドの収税官だったイーニアス・コフィ―(Aeneas Coffey)です。コフィ―は、フランスで生まれ、アイルランドの物品税監査官となり、一時ダブリンのドック蒸留所を保有し、1831年にアイルランドにおいて14年間の特許を取得したことから知られる人物となりました。彼の名を冠した"コフィー・スチル"、または"パテントスチル"よって、比較的安価なグレーン原料のスピリッツが大量生産できるようになりました。アイルランドのウイスキー業界はこの蒸留機を受け入れませんでしたが、スコットランドの蒸留所に採用されてブレンデッドウイスキーの大量生産が始まりました。
【テキスト:P202】【新版テキスト:P234】
【問67解説】
グレングラントのポットスチルは、バルジ型(変形ポール型)と、ストゥーパ(仏舎利塔)の2タイプで、初留、再留合計8基。全てに精留器が取り付けられています。
【テキスト:P58】【新版テキスト:P62】
【問69解説】
アイラ島の9つの蒸留所は地図(位置)と一緒に全て覚えておきましょう。
①アードベッグ
②ラガヴーリン
③ラフロイグ
④ボウモア
⑤ブルイックラディ
⑥キルホーマン
⑦ブナハーブン
⑧アードナッホー
⑨カリラ
※2018年10月から「アードナッホー蒸留所」が稼働し始めたので、現状でアイラ島には9つの蒸留所が稼働していることになります。また、ポートエレン(Port Ellen)蒸留所は、1983年に閉鎖されましたが、ディアジオ社によって2017年に再稼働。最近、蒸留所として再稼働することが発表され、稼働に向けて法的な手続きや試運転が行われています。本格的な再稼働は2021年を予定しているようです。
【テキスト:P68】【新版テキスト:P74】
【問71解説】
ボトラーズのゴードン&マクファイル社(通称:GM社)は、1895年にスペイサイドのエルギンで高級食料品店として創業しました。その後、自社ブランドのウイスキーを開発し、20世紀初頭よりシングルモルトを販売してきました。原酒の保有量が豊富で、蒸留所から樽ごと購入しては、自社のエルギンの熟成庫で熟成させ、独自にボトリングしています。ボトリングに際しては、エルギンの南、グレンラトリックの水を使い製品化しています。代表的なシリーズに「コニサーズチョイス」「マクファイルズコレクション」「プライベートコレクション」などがあります。1992年には、スペイサイドの「ベンローマック」を買収して、現在は蒸留所の所有者にもなっています。2018年、G&M社は、ラインナップを大幅にリニューアルし、シンプルに5つに分けました。
・DISCOVERY(ディスカバリー)
・DISTILLERY LABEL(蒸留所ラベル)
・CONNOISSEURS CHOICE(コニサーズチョイス)
・PRIVATE COLLECTION(プライベートコレクション)
・GENERATIONS(ジェネレイションズ)
これまで独立していたカスクストレングスシリーズやマクファイルズコレクションシリーズなどは、すべてコニサーズチョイスに集約される形となりました。
【テキスト:P108】【新版テキスト:P123】
【問73解説】《頻出問題》
この手の問題は毎回出題されますので、シングルモルト、ブレンデッド別にしっかり売上げの順位を覚えておきましょう。
●シングルモルト(2013年)は、
1位:グレンフィディック
2位:ザ・グレンリベット
3位:マッカランの順です。
※但し、2015年には、1位と2位が逆転しています。
●ブレンデッドウイスキーは、
1位:ジョニーウォーカー
2位:バランタイン
3位:シーバスリーガルです。
因みに、2019年の年間データは以下の表を参照。ジョニーウォーカーでさえ、世界の売上ランキングにすると第5位。1~4位は、インディアンウイスキーが独占している状況。既に世界5大ウイスキーという分類が現状に合っていない気がしますが。。。
【問83解説】
モルト(malt)は、麦芽の意味です。二条大麦はスコッチやジャパニーズなどのウイスキー、ビールなどの醸造用の原料で、六条大麦は、グレーンウイスキーでトウモロコシ、小麦などの糖化用に使用されます。
大麦は、播種時期によって、春に種を播いて夏から秋にかけて収穫する春播き(spring
barley、春大麦)、秋に種を播いて初夏に収穫する秋播き(winter barley、冬大麦)に分類できます。
ウイスキーに用いられるのは、主に春播きです。また、脱殻時に皮が取れないものを皮麦、皮と粒がたやすく分離するものを裸麦といい、二条種の大部分は皮麦で、六条種の多くは裸麦です。
因みに、大麦は、1本の軸に穂が6列ついています。そのうち、2列しか実がつかないものを「二条大麦」、6列全てに実がつくものを「六条大麦」と言います。二条大麦は実が大きく育ち、主にビールの原料に使われます。六条大麦は1粒1粒が小さく、穀物として食べられます。スコッチやジャパニーズウイスキー、ビールなどの醸造酒の原料となるのは二条種で、通称「ビール麦」と言われています。二条種は、六条種と比べ、粒は大きくデンプンが多いですが、たんぱく質が少なく、酵素力も小さいというのが特徴です。六条種は、食用・麦茶などに利用されますが、酵素力が大きいため、グレーンウイスキーで、トウモロコシ、小麦などの糖化用に使用されます。ウイスキーに用いられる大麦は、主に春播きです。
参考:ニッカウヰスキー【公式】twitterの図を加工しました。
【テキスト:P21】【新版テキスト:P13】
【問87解説】《頻出問題》
フロアモルティングとは、伝統的な方法で、水に浸けた大麦をコンクリートの床に広げ、発芽が均一に進行するように木製のシャベルや機械によって攪拌を繰り返します。麦芽づくりをする職人をモルトマンと言います。大麦の種子に含まれているデンプンは、そのままでは発酵させることができないため、これを糖に変える必要があります。大麦を発芽させることによって、酵素が生成し、この酵素がデンプンを糖に変える働きをします。大麦を発芽、乾燥させたものが大麦麦芽(モルト)です。
現在も、伝統的なフロアモルティングを行っている主な蒸留所は以下の7箇所のみ:
・ボウモア、
・ラフロイグ、
・キルホーマン
・ハイランドパーク、
・バルヴェニー
・スプリングバンク
・グレンドロナック
※図は模擬試験(100問)をクリアしてダウンロードできる参考書からの抜粋です。
写真は、ラフロイグ蒸留所のフロアモルティングの様子(出典:Whisky.com)
※因みに、サラディン式製麦法とは、伝統的なフロアモルティングと、現在のドラム式モルティングの中間的製法で、19世紀後半にフランス人のサラディン氏によって考案された方法です。大きい部屋の床を四角に区切り(これがサラディンボックス)、そこに大麦を入れ下から空気を送って攪拌する方式で大幅に効率が上がり、経済的であったらしく、その後いくつかの蒸留所にも導入されましたが、現在でも残っているのは「タムドゥー蒸留所」だけです。
【テキスト:P34】【新版テキスト:P26】
【問88解説】
収穫直後の大麦の含水率は16~20%程度ですが、それを乾燥させ、含水率13%程度に落とします。そして浸麦後には45%に高められます。こうして5日~1週間をかけて発芽を促し、麦粒の全長に対して芽の長さが8分の5から3分の2程度になった時点で発芽を完了させます。発芽の進行を止め保存性を高めるために熱源を当てて麦芽を乾燥させます。この工程には、伝統的にキルンと呼ばれる乾燥塔で行われて来ましたが、現在ではフロアモルティングを行っている一部の蒸留所でしかキルンは使われていません。乾燥させて4~5%程度まで水分を落としたものが麦芽、すなわちモルトです。
製麦は、方式が違っても原理・操作はほぼ同じで、①収穫(含水率16~20%)➡②風乾(含水率13%)➡③保管(1~2ヶ月)➡④選粒(2~3段階)➡⑤浸麦(含水率45%)➡⑥発芽➡⑦乾燥(含水率4~5%)➡⑧除根の工程となります。精麦に使用される大麦は、主に二条大麦(デンプンが多く、タンパク質・窒素の含有量が少ない品種)を使用し、2~3日水に浸けて発芽を誘導。この時に生成される酵素がデンプンを糖に分解します。大麦を水に浸し、発芽できる状態にすることを浸麦(Steeping)といい、水に浸ける浸麦槽のことをスティーブといいます。発芽方法には、伝統的なフロアモルティング(大麦を床に広げて発芽が均一に進行するように木製のシャベルや機械で攪拌を繰り返す)、近代的なサラディンボックス式、ドラム式、タワー式などの方法があります。
【テキスト:P183】【新版テキスト:P215】
【問89解説】
「フェノール」とは、ピートの燻煙に由来するフェノール化合物のことで、ppmの単位で表します。数値が高いほど、ピーティでスモーキーなウイスキーということになります。フェノール値は、麦芽について用いられることが多いです。
因みに、
・「エンザイム」は、酵素のことで、生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子です。酵母によるアルコール発酵は、まさに酵母の持つ酵素の働きによって営まれる反応です。
・「フーゼル油」は、蒸留酒を作る際に高沸点の揮発性成分として得られる混合物です。エタノールよりも沸点が高く、水に溶けにくく比重が水よりも軽いため、蒸留酒を作った際に油滴として分離し酒を濁らせたり表面に浮いてくることもあります。
・「フェインツ」は、ローワインを再溜釜に移して2回目の蒸溜を行う際、スピリッツセイフと呼ばれるガラス箱の中で「ミドルカット」という作業を行って、蒸溜されたアルコールを3つの部分に分けます。最初に出てくる液体を「フォアショッツ」あるいは「ヘッズ」、中間を「ミドル」あるいは「ハーツ」、最後の部分を「フェインツ」あるいは「テール」と呼んで区別します。
【問90解説】
麦芽の粉砕は2本のローラーがセットになったモルトミルで行います。多くの蒸留所では、ローラーが2組あるタイプのものが使われ、ローラーの幅や回転速度を調整して麦芽の挽き分けを行います。
タムドゥー蒸留所のモルトミル(写真出典:Whisky.com)
粉砕された麦芽のことをグリスト(grist)といいますが、グリストは、
ハスク(Husk:殻)
グリッツ(Grits:粗挽き)
フラワー(Flour:粉)
と3つの異なる仕様に挽き分けられます。
大きさで言うと、
ハスク(粒径1.4mm超)
グリッツ(粒径1.4~0.2mm)
フラワー(粒径0.2mm未満)
の3つの部位に分けられます。その比率は通常2:7:1となっています。ハスク(殻)を2割程度残すのは、麦汁を濾す際に濾過材として用いるためです。
【テキスト:P185】【新版テキスト:P217】
【問93解説】
モルトウイスキーの場合、銅製の単式蒸留器「ポットスチル」(pot still)が使われます。
スプリングバンク蒸留所の再留釜(写真出典:Whisky.com)
【テキスト:P36】【新版テキスト:P28】
【問96解説】《頻出問題》
主なウイスキー樽の種類は、順番に覚えておきましょう。
①バレル(Barrel)180~200ℓ
②ホグスヘッド(Hogshead)250ℓ
③パンチョン(Puncheon)480~500ℓ
④バット(Butt)480~500ℓ
小さい順か、大きい順に覚えておきましょう。
参考:Forbes.com
※クォーターとは、バット(500ℓ前後の樽)の4分の1、127~159ℓの容量の樽。
一緒に樽の名称も覚えておきましょう。
【テキスト:P39、P196】【新版テキスト:P31、P228】